「告白」や「贖罪」などで注目を集めている湊かなえさん原作の「白ゆき姫殺人事件」。
私は湊かなえさんの小説が大好きで、この作品もすごくおもしろかったです。
人間のドロドロした部分をうまく描く湊かなえさんですが、「白ゆき姫殺人事件」でも女の嫉妬やねたみ、虚栄心からくる底意地の悪さがいい具合ににじみ出ています。
この作品のおもしろいところは、誰もが情報発信者になれるネットやSNSが普及し、何が真実で何がデマなのか、情報の見極め難しくそこが恐ろしいというリアリティ。
今回は映画「白ゆき姫殺人事件」についてご紹介します。
「白ゆき姫殺人事件」とは
「白ゆき姫殺人事件」とは、2012年に発売された湊かなえさんの同名小説です。
2014年に映画化されました。
映画化の後、eBookJapan、BookLiveなどで那葉優花さんが作画のマンガ化もされました。
「白ゆき姫殺人事件」あらすじ
化粧品会社で働く美人OL、三木典子(菜々緒さん)がめった刺しにされた上焼かれるという凄惨な殺人事件が起きる。
社内一の美人が殺されたことで、「白ゆき姫殺人事件」と呼ばれ話題に。
そんなときテレビ局でワイドショーを制作している契約ディレクターの赤星(綾野剛さん)は、学生時代の友人、里沙子(蓮佛美沙子さん)から電話で「白ゆき姫殺人事件の被害者は自分の同僚だ」という話を聞き、社内の人間に取材をすることに。
そこで浮かんできた一人の女性。
それは典子の同期で、地味で目立たない城野美姫(井上真央さん)だった。
事件当日、典子が殺害される前に美姫の車に典子が乗るところを目撃されていて、殺害後には大きな荷物を抱えて駅に向かって走っている姿などを目撃されていた。
赤星は当初のインタビューからSNSなどで独自の考えを発信、そしてインタビューで得た情報を元に、情報番組を制作し美姫が犯人であるかのような情報が広まっていく。
美姫の過去や人柄、そして実名までもが次々に広まり・・・
「白ゆき姫殺人事件」キャスト
主演の井上真央さんは他の作品ではとってもかわいくてキュートな印象ですが、この作品ではかわいいキラキラしたオーラは完全に消されています。
この作品の中では、とっても地味で目立たない存在でなりきってましたね。
女優さんってすごいです!!
また綾野剛さんもすごくいい演技してました!
この方本当にどんな役でもできるんですね。
この映画ではいい加減でチャラい感じの映像ディレクター赤星。
このブログでも前回ご紹介した映画「亜人」より3年も前の映画ですが、それにしても真逆で薄っぺらい男の役で、見事に演じられていました。
そしてこの映画の中で、社内の人間や故郷の友人たちにインタビューしながら物語を進めていく重要な人物です。
「白ゆき姫殺人事件」の見どころはココ!
「白ゆき姫殺人事件」がおもしろいところは、殺人事件の犯人は誰だ!?という犯人捜しや謎解きトリックなどではないんです。
もちろんそこもおもしろいのですが、事件そのものはたいした事件ではありません。
SNSなどで情報だけが独り歩きしていくところや、人の記憶は都合のいいように改変され、ほとんどの場合真実から離れていること。
そして同じ人物、同じ出来事でも人の見方によってこうも印象が変わるのかという恐ろしさにあると思います。
そして物語の展開、構成がとてもおもしろい。
まず映画は赤星が被害者の関係者ひとりひとりにインタビューによる回想シーンで物語が進みます。
ここで話している人によって、同じ出来事も微妙に食い違いがでてくるんです。
これは映画の中のセリフでもありますが、「人の記憶は都合のいいように改変される」ということを表しています。
話す人の主観や、思い込みから話がどんどん盛られ、事実と印象が大きく変わります。
またそれを受ける方も、周りのウワサや自分の「そうだといいな」「そうだったらおもしろい」「きっとそうに違いない」という思い込みから、信じたい方を信じます。
都合よく解釈したことをさらに拡散され、もはや原型がないくらい事実から離れていってしまうという恐ろしい部分をリアルに描かれています。
またワイドショーのディレクターである赤星は、インタビューをした証言のおもしろい部分、都合の良い部分だけを切り取り、まるでそれがすべてであるかのように番組を作っていきます。
そして反響があれば、さらに話を盛って事実とはかけ離れたことを、まるで「事実」のように報道します。
さらに事件についてはSNSなどでさらさないといわれているにも関わらず、得た情報の都合のいい情報だけを流し、自分に同調してくれるコメントにだけ反応、反論コメントは無視、さらには叩くというゲスディレクター。
実際の報道に関しては知りませんが、こういったことってリアルにどこにでもありそうな話ですよね。
「白ゆき姫殺人事件」ネタバレありで徹底解説
注意!
ここから物語のネタバレがあります!
さすがに犯人の名前はふせていますが、映画や原作を楽しみたい方はプラウザバックしてくださいね!
ちょっとした悪意が人の人生を狂わすことも・・・
私が個人的にこわいなーと思ったのは、美姫の大学時代の友人、前谷みのり(谷村美月さん)です。
彼女は過熱するSNSでの「城野美姫犯人説」に対して、「私は大学の頃からの親友で、てんちゃん(美姫の愛称)はそんな子じゃありません」と美姫をかばいます。
美姫を守りたいがために、このような書き込みをするのですが、だんだん「は?なんでそんなことまで?」といった、さらされたくないプライベートな部分まで公表します。
このことがきっかけで、ますます美姫の印象は悪くなり、さらに犯人に違いないという印象を与えてしまうんです。
後に、実はみのりは美姫が先に彼氏ができたことを悔しがり「てんちゃんに負けるなんてありえない・・・」と言っています。
おそらくみのりに「美姫を陥れてやろう」という悪意はなかったかもしれません。
だけど美姫のちょっと恥ずかしい部分をさらしてやろうという、小さな小さな悪意があったことは否めません。
本人は「親友の美姫を守った!」といった、自己満足すら感じていたかのしれませんが。
発信者本人が気が付かないくらいの小さな悪意で、しかも「美姫を守った」という間違った自己満足のために、実は誰かが傷ついていることを誰も気がつけないことが、とても怖いと思います。
女同士って友達同士でもそういったマウンティングって、きっと多かれ少なかれあると思うんですが、そんな女同士の関係性が非常にリアルで怖いですよね。
実はこういう女こそが、一番身近で親友のフリして陥れてくるので恐ろしいです!
罪悪感がなく話を”盛る”
ちょっとおもしろくしようと、事実を少しだけ盛って話すことって誰にでもあると思います。
だけど嘘をついているわけではないので、罪悪感はほとんど感じない。
ネットなどではそういった”盛られた情報”があふれているという恐ろしさが描かれています。
インタビューを受けている人はみんなそれぞれ話を少しずつ盛ることで、「城野美姫」という女性の人格までも事実と完全に変えてしまいます。
嘘ではないかもしれませんが、自分の都合のいい解釈を加え盛ることで、どんどん事実から遠くかけ離れていきます。
ちょっと話を盛っただけ・・・
それだけの悪意のない小さなことで、誰かを傷つけ誰かの人生をめちゃくちゃにしてしまう恐ろしさが日常の中に潜んでいる・・・
白ゆき姫殺人事件は、殺人事件をではなく、そういった日常に潜んでいる恐怖を描いている作品なんだと思いました。
映画のラスト
映画のラストではいい加減な取材で捜査をかき乱し、無関係な美姫を犯人のようにさらし続けていた赤星。
赤星は美姫の実家に謝罪にいきますが当然取り合ってももらえず、ネットでは実名がさらされて大バッシングを受けます。
まぁ自業自得なんですが、がっくりと肩を落としながら歩く赤星に、美姫の運転するとあわや接触しかけ驚いて転倒。
美姫は「大丈夫ですか?」と声を掛けますが、車に当たっていないのを確認したらホッとしてすぐに立ち去ろうとします。
赤星は美姫のことに気が付かず「イヤなことがあって・・・なんかもう自分が自分でなくなるっているか・・・」
とグチをこぼし、「あ、すみません、なに言ってんだろ・・・初めて会った人なのに・・・」と謝ります。
美姫は「ありますよ。いいこと。」と笑顔で励まして別れます。
美姫が車に戻り赤星がまた歩き始めると、赤星の後輩編集マン長谷川(染谷将太さん)が「いや、今の人!今の!」と駆け寄りますが、それでも赤星は気が付いていません。
長谷川は気が付いていたんですね。
今の女性が城野美姫だと。
しかし実際に取材をしウワサを拡散させた張本人である赤星自身は、その被害者となった城野美姫だと気が付いていない。
なんでもないシーンですが、めっちゃ怖いな!って感じました。
顔もわからないような人が、あることないこと広めて、自分の人生を狂わせるという恐ろしさをコミカルに、でも非常にリアルに描かれています。
これだけ取材してきたのに、本人と出会っても気がつかないなんて、赤星のいい加減さがよく表れています。
最初は人のうわさによってできた先入観とイメージは、事実と全く違っていることを表しているのかとも思ったのですが、後輩の長谷川は気が付いているので、やはり赤星の人間性なんでしょうね。
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まとめ
今回は映画「白ゆき姫殺人事件」についてご紹介しました。
最近はすっかりSNSも定着し、誰もが自由に情報を発信できる時代です。
しかし無責任に発信することで、誰かが傷ついていたり誰かの人生を狂わせることも簡単にできてしまう危険性を伴うということを自覚しないといけないなと、改めて考えた作品です。
原作を読んだのも映画を観たのももっと昔で、こんな仕事をする前でしたが、今この映画を見返して改めて情報を発信することの責任感、そして事件などの報道はどこまで事実なのか見極める目を持つことの重要性など、いろいろと考えさせられました。
この作品に出てくる証言者のような人って、実際には非常に多いんじゃないかと思います。
嘘をついていたのではなく、自分に都合のいいように解釈をまぜて、つまり罪悪感もなく話を盛ってしまっただけ。
しかしこのちょっとしたことで、誰もが美姫のような被害者になりうるという警告のような恐ろしさを感じました。