東野圭吾さんが原作の「人魚の眠る家」。
とっても重たいテーマですが、ものすごく考えさせられた映画です。
私元々東野圭吾さんの小説が大好きで、昔の作品はほぼほぼ読んだんじゃないかってくらい読んでます。
子どもが生まれてからは時間がなくなり、小説はほとんど読まなくなりましたが・・・
「人魚の眠る家」も原作はまだ読んでないのですが、それでもこの映画は何度観ても涙が止まりません。
予告でも泣いてしまうくらい悲しい物語・・・
そんな東野圭吾さん原作で篠原涼子さん主演映画「人魚の眠る家」をご紹介していきます!
映画「人魚の眠る家」あらすじ
播磨薫子(篠原涼子さん)は夫、和昌(西島秀俊さん)の浮気がきっかけで現在別居中。
娘、瑞穂(稲垣来泉ちゃん)の有名私立小学校の受験が終わったら離婚するつもりでいた。
その日は薫子の母、千鶴子(松坂慶子さん)に子ども達を預けて、小学校受験の面接の練習のために久しぶりに夫婦顔を合わせた。
そこに1本の電話が入る。
娘の瑞穂がプールでおぼれて意識不明だという。
慌てて病院に向かうが、担当医師である進藤(田中哲司さん)からは「脳死の可能性がある」と告げられ、厳しい選択を迫られる。
意識の戻らない瑞穂をこのまま延命措置を続けるか、脳死判定を行い臓器移植をするか・・・
臓器を提供しないなら、脳死判定は受けられない。
その場合は延命処置をする。
しかし臓器を提供するなら脳死判定を行い、脳死が確認されれば心臓が動いたとしてもそれは死亡とみなして臓器提供を行うという。
医師は「脳死と心臓死、どちらの形で命を終えるか選択できる」という。
薫子は、「心優しい瑞穂なら、きっと、誰かの助けになりたいというだろう・・・」と、臓器を提供することを決める。
しかし脳死判定の日、最後の別れのとき、薫子と和昌が握りしめていた瑞穂の指がかすかに動く。
薫子は「この子は生きてる」と臓器移植を拒む。
そして心臓が動いている限り、自宅で介護を続けることを決意する。
薫子の夫、和昌は父がつくったIT機器メーカーを経営している。
社内の会議で和昌は、手術で横隔膜ペースぺーカーという電気信号で横隔膜を動かす機器を埋め込めば、人工呼吸器を外せることを知り、瑞穂にもその装着手術を受けさせる。
薫子から、瑞穂がわずかな呼吸運動で体の代謝があがり、調子が良くなってきたと聞かされた和昌は、もっと体を動かせばもっと体の調子が良くなるのではと考える。
障がい者をサポートする社員の星野祐也(坂口健太郎さん)の協力で、電気信号を送って手足を動かす最新技術を使って、瑞穂を運動させることを希望する。
日々運動をすることで血色も良くなり、体の調子や骨のゆがみも改善されたと、瑞穂の体が動くことをただただ純粋に喜んでいた和昌と薫子。
しかし次第に薫子の行動はエスカレートしていく。
それは愛情なのか狂気なのか、わからないほど・・・
映画「人魚の眠る家」キャスト
実力派の女優さん俳優さんばかりで、このキャスト陣だけでも期待できそうですよね。
みなさん文句なしに演技力は素晴らしいのですが、子役さん達が素晴らしい!
演技力ももちろんですが、とにかくみんなかわいい!!(笑)
重い映画なのでどうしても仕方ないのでしょうが、なかなかハードなシーンにも出ていて、役者の子ども達がトラウマになってしまわないか気になるくらいの衝撃的なシーンでも、迫真の演技を見せてくれていました。
子ども達を応援し、ただただ幸せを願いたくなりました。
映画「人魚の眠る家」ネタバレありの感想!
注意!
ここからネタバレしますので、まだ作品を観ていない人は気をつけてくださいね!
「人魚の眠る家」は非常に重たいテーマですが、映像は色鮮やかで、趣のある大きな屋敷と、リビングにはカラフルな子どものおもちゃが並び、幸せそのもの。
しかし中盤から、灰色で薄気味悪い雰囲気が漂い始めます。
徐々に狂気じみてくる薫子と研究に没頭する星野。
それを不気味に感じながらも誰も止められない・・・
そして最後にはまた色鮮やかなやわらかい色合いに変わり、それぞれの心の変化を表しているようで、そんな背景にも注目です!
脳死か心臓死か
まず「人魚の眠る家」のテーマ自体が重たいのですが、主人公である夫婦は、まだ幼い娘を水難事故により脳死の可能性があると宣告されます。
そこで医師に突き付けられたのは、「脳死か心臓死か」の選択。
日本では、心臓が動いていれば生きているとみなされると医師から言われます。
脳死の状態だからといって、それだけでは死亡とはできないそうなんです。
臓器移植に関しては、本人の意志を明確にしていなければ、家族にその判断をゆだねられます。
劇中でも母親の薫子は「それならまず脳死判定をしてください。移植の話はその後です」と言いますが、それは日本の法律ではできません。
臓器移植をすると決めてはじめて、脳死判定を行い、心臓が動いていても死んでいるとみなさるのだとか。
つまり臓器移植をするなら、脳死を選んで心臓が動いていても死亡とされる。
だけど移植をしないなら脳死判定そのものができず、心臓が動いている限り生きているとみなされる。
脳死か心臓死か。
そんな選択、親にはできませんよね。
心臓は動いているけど、脳は機能していない。
脳は死んでいても、心臓は動いている。
でも体はあたたかいのに「死んでいる」と受け入れられるか・・・
それがわが子なら、自分は受け入れることができるのか・・・
延命措置をすることを、薫子自身も「親のエゴなのかも」と悩む描写がありますが、家族がそんなことになったら、私は経験したことがないのであくまで想像になりますが、やはりできることはすべてやりたい。
例えエゴでも・・・そう思うんじゃないでしょうか・・・
臓器を提供できる子どもと臓器を待つ子ども
電子信号によって、人工的に体を動かせるようになった瑞穂。
はじめは純粋に喜んでいた和昌だが、だんだん意志もないのに体だけ動く瑞穂に対して恐怖心を抱き、少しずつ瑞穂を避けるようになります。
そんなとき、学生時代の後輩、門脇(大倉孝二さん)と街で偶然再会。
門脇の知り合いの子どもが、拡張型心筋症のため心臓移植するために募金を募っているといいます。
瑞穂の心臓を移植してあげれば、助かる命があると罪悪感に苛まされ、和昌は多額の募金を寄付します。
心臓移植を待ちながら、状態が芳しくない少女の父親、江藤(駿河太郎さん)に、「知り合いに長期脳死といわれているが受け入れられない知り合いがいて・・・」と遠回しに懺悔します。
和昌の様子で何かを感じ取った江藤は
「妻と決めたことがあるんです。ドナーが現れるのを願うのはやめようと」
「脳死と言われる子どもや、その家族が辛い立場に立たされるのは絶対に避けたい」
「脳死を受け入れられない気持ちはわかります。だってその親にとってはその子どもは生きているんですから」
とはげまされるのです。
臓器移植を待っている親の気持ちと、脳死を受け入れられずに苦しむ親の気持ち・・・
わが子の脳死は受け入れられないけど、生きる可能性のある子どもを見殺しにするような罪悪感・・・
私はどちらも経験したことはありませんが、ただただ辛いシーンです。
どちらの親も辛いです。
そしてどちらの親も悪くはないと思います。
ドナーが現れることを願うことも、脳死状態であっても臓器移植を拒むことも・・・
そんな経験をしたことのない人が、「身勝手だ」と責めることなんてできません。
きっと私なら、「臓器をゆずってほしい」と願わずにはいられないでしょう。
そして反対の立場なら、わが子の脳死を受け入れることができずに、可能な限り延命措置を続けるのではないでしょうか。
身勝手になって当然じゃないでしょうか。
まったく逆の立場の人と出会うことで、様々な視点から考えることになりました。
狂気?愛情?母親の想い
星野から電気信号によって手足が動くようになり、徐々に瑞穂の母親である薫子が狂気じみてきます。
瑞穂の介護で2~3時間程度の切れ切れの睡眠で、意識のない娘の介護は24時間気が休まるときはありません。
精神的にも肉体的にも辛いでしょう。
それがいつまで続くかわからない。先が見えない不安もあるでしょう。
そういったギリギリの精神状態と偽りの希望によって、薫子の行動はエスカレートし狂気じみていきます。
眠っている瑞穂を車いすで連れまわしたり、瑞穂の2つ下の弟、生人(斎藤汰鷹くん)の入園式にまで瑞穂を連れていき、周りからの視線も気にしない薫子。
まだ幼かった生人は純粋に姉を慕っていましたが、小学校に入り周りの友人から気味悪がられ、瑞穂を避けるように・・・
そして生人の誕生日。
自宅でお祝いをするために、星野や千鶴子、薫子の妹の美晴(山口紗弥加さん)と娘の若葉(荒川梨杏ちゃん)、星野や和昌も集まります。
しかし生人は友達を呼んでいないという。
「お姉ちゃんは死んでるのに、動いて気持ちが悪いって言われるから。もう死んだっていった」という。
それを聞いて逆上した薫子は生人を叱り、今から友達を呼ぶようにいいます。
「みんなに瑞穂を見せればわかる!瑞穂が動けば生きてるってみんなわかる」「わからせてやる」と叫びます。
しかし和昌は「意識もないのに体だけを機械で動かして生きていると言えるのか」「医学的には瑞穂はもう死んでるんだ」と説得します。
すると薫子は、正気を失ったような目で瑞穂に包丁を突きつけ、自ら警察を呼びます。
そして「生きているのか死んでいるのか、法律に決めてもらう」と言います。
「医師からはこの子は脳死かもしれないといわれている。
脳死で死んでいるなら、この子を刺して心臓が止まったとしても殺人にはならない。
だってもう死んでいるから。」
「娘を殺したのは私でしょうか・・・」
と。
「瑞穂はとっくに死んでいて、技術で外見を保っていただけなら罪にはとわれない。
でも生きていたなら殺人罪。
そしたら喜んで罪を受け入れます。
だって瑞穂が生きていたとお墨付きをもらえたんだから」
そういって包丁を振り上げますが、和昌は身を挺して瑞穂をかばいます。
「どうして止めるの!瑞穂は死んでいるならもういいじゃない!人は二度は死なない」
和昌は涙を流しながら「この子を殺さないでくれ」と訴えます。
薫子のこの一連の行動はかなり狂気じみています。
一部の感想では「ホラーだ」という意見もあるほどです。
だけど自分の子どもが脳死になり、自宅で24時間介護を続けながら神経をすり減らし、でも成果も効果も達成感もありません。
そんなときに技術の力で自分で呼吸して、寝息が聞こえ、手や足が技術の力で動いたら・・・
真っ暗闇の中から差し込んだ、一筋の光にすがってしまうんじゃないでしょうか。
まともな神経でいられるでしょうか。
例えそれが異常であっても、何かにすがらないと人は生きていけません。
狂気かもしれない。
でも愛情がなければ、ここまでがんばることはできないんじゃないでしょうか。
原作の帯には「狂ってでも守らないといけないものがある」と書かれていました。
確かに薫子は狂っていたかもしれない。
でもそれこそが娘に対する深い愛情だったんだと気づかされ、そしてまた涙があふれるのです。
瑞穂の生きた時間
瑞穂は事故からおよそ4年間、たしかに生きていました。
薫子は周りに何をいわれようと、どんな目でみられようと、そのことを貫きとおします。
脳は機能していなくても、寝息が聞こえ体があたたかいその人の死を選択することはできるのか。
そんな自信はありません。
薫子は夢の中に瑞穂が出てきてお別れを言ってくれたとき、はじめて瑞穂の死を受け入れることができました。
そして薫子と和昌は、瑞穂の臓器提供をすることを決めるのです。
夢の中で瑞穂が薫子にお別れと感謝の言葉をいうと、薫子は「私も幸せだったよ」とこたえます。
辛くても辛くても。
母親としてわが子の世話ができること。
それがどんなに過酷で苦しくても、死んでしまえばもう世話はできない。
生きているということだけを頼りに、それだけを信じて、娘が生きている喜びと幸せを感じられた時間は、薫子が瑞穂の死を受け入れるために必要な時間だったんだと思います。
できる限りのことをやってあげたからこそ、最期とても穏やかに瑞穂をおくることができたのではと思います。
幸せになってほしい生人と若葉
最後に瑞穂の弟の生人といとこの若葉。
生人は瑞穂と仲も良く、眠っている瑞穂に対しても疑問を抱かず慕っていましたが、小学生になり周りからいじめられそうになったことで瑞穂の存在を隠すようになり「お姉ちゃんは死んだ」と周りにいいます。
かわいそすぎだろ・・・弟生人・・・
瑞穂の事故から、母である薫子は24時間瑞穂にかかりっきりです。
瑞穂を看病しているため、千鶴子が生人を寝かしつける描写もあり、幼いながらもさみしい想いもたくさんしていたんじゃないでしょうか。
そしていとこの若葉。
いつも瑞穂に会いに来てくれる若葉でしたが、生人の誕生日で薫子が瑞穂を刺そうとしたとき、実は若葉が落とした指輪を拾おうとして瑞穂はおぼれたんだと告白します。
「私のせいで瑞穂ちゃんはこんな風になったから。
私が大人になったらおばさんを手伝うから、だから瑞穂ちゃんと殺さないで」
そういって、泣きながら謝り続けます。
まだ幼い若葉が、ずっと誰にも言い出せずにひとりで罪悪感を抱えていたのかと思うと、ただただ辛い。
だけど瑞穂の最期を生人も若葉も穏やかにみおくることができて、強い子たちだ!と泣けてきます。
若葉としても、しばらくの間瑞穂が生きていたことで救われていた部分はあったんじゃないかと思います。
そしてちゃんと「私のせいだ」と告白できたことで、ずっとひとりで抱えていた罪悪感を吐き出せ昇華されたのではと思います。
この子ども達も幸せに生きていってほしいですね。
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今回かなりネタバレしてますが、気になった人はぜひ見てみてくださいね。
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まとめ
今回の「人魚の眠る家」は非常に重たいテーマで、私も書きながらとても悲しい気持ちになってしまいました。
スッキリハッピーエンド!という作品ではありませんが、いろいろと考えさせられる作品であることは間違いないでしょう。
この映画を観て「薫子ひどい!移植を待ってる子どものために移植をするべきだ」と思う人も中にはいるかもしれません。
もし私が、子どもの病気で移植を待つ親の立場なら、きっと江藤のように考えられないなと思います。
江藤のような考え方は理想ですけどね・・・
現実的には難しいのではないかな・・・
やっぱり私はドナーが現れるのを願ってしまうのではないかと思います。
ドナーが現れるということは、どこかで子どもをなくして悲しんでいる親がいるとわかっていても・・・
そして薫子の立場になれば、やっぱりわずかな望みにすがって可能な限り同じことをするのではないでしょうか。
実際にある程度の経済力がなければあそこまでのことはできませんが、もしそれが可能なら・・・
できることはすべて、なんだってやりたいと思うのが親なんじゃないかな・・・
誰も悪くないし、誰も責めるべきではない。
何が正しいかではなく、何ができるか・・・どこまでできるか・・・
愛情も狂気もすべて注げるのか・・・
いろいろと考えさせられた作品でした。